読書感想文『最初にして、最後のアイドル』

それは、雷かと見間違えるほど、素早く放たれた。雷光と間違える程だから、それは光速に近しいともいえる。


ブルーの点滅を繰り返すキングブレードを激しく振っていたファン達も、何が起こったのかわからず。ぼうぜんと立ち尽くす。

それは「彼女」の頬を狙いあやまたずに到達し、その断固たる、光まばゆい”意思”を叩きつけていた。

私こそが『アイドル、だ』と。

床を転げまわり、不快なハウリング音を響かせるマイクを拾い上げ、その場に居たすべての”知性”に告げる。

『私は古月みか。最初にして、最後の、真実のアイドルミカ☆』

という話では全くありません。

概要

SFです。サイエンス・フィクション(科学的な創作話)。イヤ、SF(すこしふしぎ)でもエエんやで?『SF』なのに『アイドル』??ナンデ??ナンデアイドル???と思う人々も多々おられるでしょう。誰だってそー思う、オレだってそー思う。

アイドルなのに~という切り口でいうとロボットアニメ製作の大御所たる「サンライズ」=サンが2007年に同名ゲームとのタイアップとして世に送り出した「アイドルマスター XENOGLOSSIA」なんかも相当にキてましたね。原作(?)のゲームのキャラだけ使って、「アイドル=偶像」という言葉から「偶像=巨大ロボット!」という三段論法超理論を展開し、知ってる人はもちろん、知らない人が見ても「どう贔屓目に見ても完全に別モノですどうもありがとうございました」というパッケージに仕上がっていました。だがそれがいい、とか書くと刺されますか

(このアルバムのボーカル部分だけを聞きながら出勤するのが最近のフェイバリット)

※心底どうでもいい余談として、モ人はアイドルマスターのこと、全然わかりません。アイカツとスクフェスとスクストとラブライブとアイマスとデレマスとからそれぞれ三人づつ無作為抽出して所属当てゲームをしたら全問不正解をたたきだせる自信があります!!(なんの自信だよ)

この作品、第4回ハヤカワSFコンテストでの特別賞受賞作品ということで、電子書籍のみの販売となってます。この作者さん、これ以外は別作品の短編集にHITするのみでこれからの方なんだろうと思うのですが、なかなかユニークな文章を書かれています。

『けものフレンズ』はなぜSFとして「すっごーい!」のか|草野原々、大いに語る|草野原々|cakes(ケイクス) 『けものフレンズ』はなぜSFとして「すっごーい!」のか|草野原々、大いに語る|草野原々|cakes(ケイクス)

きっかけとしては、結局『けものフレンズ』なのですが。まァいいじゃないですか。子供たちも『ようこそジャパリパーク』を熱唱する程度にはなりましたし、嫁さんからあきれられてますが…

特に面白いなーと思えたのは

実存への問いかけを世界の仕組みと結びつけて論じるということは、これまで多くのSFジャンルにおいて行われてきたことだ。タイムトラベルSFは時間の中での個人の意志とは何かということをテーマに論じる。ファーストコンタクトSFは宇宙の中の人類の位置を探る。サイバーパンクではテクノロジーの発展と人のあり方が考えられる。フェミニズムSFではジェンダーが前提となる社会と個人との関係性が議題に挙がる。歴史改変SFでは現在の我々とあったかもしれない可能性の中の我々が対比される。けものフレンズは動物とヒトとの比較を通じて実存を問いかける。

という部分。「けものフレンズ」をついつい見てしまうのも、記憶をなくした主人公、かばんちゃんが自分は何の動物なのかを探す旅を通して自分(人間)とフレンズ(動物達)とのちがいを認識をして、成長していく物語だったからですね。なるほど―と思った、というのは

Twitterを一時シャットアウトするよ Twitterを一時シャットアウトするよ | これが我が家の生存戦略

でも書きましたが、サイエンス=科学的なギミックを通して「自分/自分達って何なんだ」「他とは何が違うんだ」というのを問う、考える仕組みってのは「そんな風に意識はしてなかったけど、そういえばそうかも!」と納得できる部分があるもんです。

印象に残ったトコロ

意識とは、何であろうか?進化の過程で人間が獲得した、生物学的機能だというのが、答えの一つだ。

本当だろうか?どうにも疑わしく思われる。(中略)しばしば、意識は効率の邪魔となる。自然の中で生きていくためには、一々意識を生成していくという方法はハイコストローリターンである。(中略)

では、意識はどのように生まれてきたのだろうか。重要な点は、意識とは生まれつき持っている生物学的機能ではないということだ。むしろ、意識とは後天的に個人に伝授される文化的機能であるのだ。あるいは、こうも言い換えられる。意識とは、文明により個人にダウンロードされるソフトウェアである、と。

では、問題は意識というソフトウェアはどのような方法でダウンロードされるかということだ。よく聞け。よく読め。いまここに、その答えを記す。

意識はアイドルによって個人へとダウンロードされる。

もうね、クライマックスから引用持ってきてもネタバレにならないこの突飛さ(褒めてます)たまりません。

ざっくりとした内容として…

序盤は主人公である古月みかと新園眞織の出会いとアイドルへの道

中盤は、挫折と悲劇をトリガーとした、世界の変容(ここらへんから、科学的なグロ描写注意)

終盤は≪アイドル≫と黙示録…

…何を言ってるか判らねーと思うが、俺も何をされたのか判らなかった…

関連

なんか、SF!を読みたくなる良作です!個人の意識だどーのこーのというあたりは以前、読書感想文で書いた『読書感想文 人生の法則「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人』の結論で描写される『ミーム』と関連している(というか、個人は『ミーム』というクラウド意識の端末にすぎず、上位存在の意志により『意識』がインストールされる、というあたりの考えはサイエンス=科学を扱っているのに、結論が宗教めいているという点で同じです…)

読書感想文 人生の法則「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人 読書感想文 人生の法則「欲求の4タイプ」で分かるあなたと他人 | これが我が家の生存戦略

安いし、紙の本にして52ページというサクッと読める分量(といいつつ、いざ読みだすとボディーにキいてクる内容なんですが)なので、皆さん、いかがッスか?

それでは せいぞんせんりゃく しましょうか

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